今はもうほとんど使われる事のない場所。
時折貧乏くじを引いた生徒や教師が訪れるだけの、ひっそりと差し込む光に埃だけが舞う場所。
雑多な資料、使われなくなった机や椅子、様々な荷物が雑然と置かれているこの場所にあの子はいる。
優しい春の日には、初々しい新入生達を見つめながら。
眩しい夏の日には、暑さの中を元気に活動する生徒達を眺めながら。
物悲しい秋の日には、恋を語らう生徒達を見守りながら。
厳しい冬の日には、凍えながらはしゃぐ生徒達に目を細めながら・・・
もう、何度の季節を越えてきたんだろう・・・・
最初は同じ制服を着た生徒もいた。
季節が巡るにつれ、その制服を着た生徒はいなくなっていき。
そしてカラフルで様々なバリエーションの華やかな制服に身を包んだ女生徒達。
春を迎えるたび見知った顔が居なくなって、そして新しい顔が増えていく。
ただ、自分だけが変わらない。
何年かに一度、本当にごく珠に。
この場所を気に入って、通いだす変わり者が現れる。
けれど・・・あの子に気付く事は本当にごくまれで・・・
時折気配を感じたり影を見かけたりするぐらいで。
それが悪い噂にになったりもしたけど、どうって事はない。
また一人の時間がやってくるだけのこと。
今年もまた一人、変わり者が居るようだった。
見覚えはある。
今年二年生になった男の子・・・前に一度だけ話したことがある。
けど・・・もう覚えてないんだろうな・・・
その時から、なんでか気にはなってたんだよね。いつも背の高いしっぽの女の子と小さな女の子と仲良くしてるところを見かける。
「きっと、優しい子なんだね。」
彼女達の笑顔を見れば解る。
野良猫みたいにじゃれあって、意地悪もするけど凄くあの男の子を信頼している笑顔。
「しんいちろう・・・くん・・・か・・・」
そんな子が何でこんな場所にやってくるのかは解らない。
ただ・・・興味はあった。
いつもかわいい女の子を連れてるあの子。
なのに一人でこんなところにくるあの子。
今度来た時に、話し掛けてみてもいいかな?
大丈夫かな?
変な噂立っちゃってるし・・・
怖がって逃げられたりしたら傷ついちゃうなぁ・・・
けど・・・彼、優しそうだから、大丈夫だよね。
ちょっとぐらい話し掛けたって大丈夫だよね。
もしかしたら、友達になったりなんか出来ちゃうかもね。
友達になれなくても、たまには話し相手くらいにはなってくれるかもしれないよね。
あの娘達みたいにはなれなくても・・・ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、優しくしてくれるかもしれないよね・・・・
ここは旧校舎。
それはある物語が始まる前。
どこにもあるはずがない女生徒が、どこにでもあるオンナノコの戸惑いを見せた一瞬の話。
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